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「戦後日本の家族と女性の就労形態:パートタイマーの選択性の問題を中心に」中央大学大学院商学研究科商学専攻修士論文(2001年1月)を執筆しました。

●概要
本論の課題は、パートタイマーの成員の中心を成す既婚女性を考察対象としながら、家族という分析視角によって、パートタイム労働問題に内包される選択性の問題について解明することである。

第一章では、各種統計資料に依拠しながら、いかなるパートタイマーがどれほど存在するのかを考察した。しかし、パートタイマーについて統計では多義的に把握されているため、パートタイマーの概念を、「客観」、「主観」、「呼称」という指標によって三類型に操作し、その趨勢を把握した。その結果、三類型のいずれの指標においても既婚中高年女性がその趨勢の牽引役となっていたが、指標によってその数量・構成比には差異が見られ、国の統計における概念の相違がパートタイマーを把握する上で大きな障害となっていることが確認された。また、労働時間によって、短時間パートと疑似パートとに区別し、両者の比較を行いながらその実態を分析した結果、前者には家計補助的労働者が、後者には非自発的労働者が多く含まれていることが明らかになった。

第二章では、これまでのパートタイム労働問題研究のレビューを行った結果、その議論の多くが、疑似パートと正社員との労働条件の格差の問題に収斂されることによって、短時間パートの問題が「自由な選択」という見解へ矮小化されてきたことが指摘できる。そこで、パートタイマーの選択性の問題を解明するための新たな分析視角の設定へと結びつけた。

第三章では、家族を「制度レベル」と「実態レベル」に区分し、この二つの側面からパートタイマーを照射することによって、パートタイム労働問題に内包される選択性の問題を評価するための知見を得た。「制度レベル」とは、端的には家族の外的要因のことであり、本章では近代家族を支えている母性イデオロギーという社会規範の成立と定着について言及し、就労選択と社会規範の関係を論究した。一方、「実態レベル」とは、同じく家族の内的要因を指し、各種統計資料に依拠しながら、妻フルタイム世帯・妻パートタイム世帯、三世代家族・核家族との比較によって、家族成員の家事分担と夫婦の家計に基づくキャリア選択の実態を中心に考察した。その結果、制度レベルの分析からは、母親役割を強調する装置によって、母親の就労選択が、負の「複数文脈性」として解釈されることでパートタイマーを選択している側面があることが解明された。また、実態レベルの分析からは、①パートタイム労働は伝統的な性別役割分業を温存・強化する形で既婚女性の就業を拡大させたこと、②性別役割分業を行うことが世帯の家計戦略的な選択であることが明らかにされた。

最後に、終章では、如上の分析結果をもとに、パートタイマーの選択性の問題を再び取り上げて検討した。結論を急げば、第三章で明らかにされたように、性を基準に就労を選択することで、家族が最大限の効用を得ていたのである。つまり、パートタイム労働という選択は、個人ではなく家族にとって「自由な選択」であったのだ。したがって、家族から個人を引き出すことによって、あらゆる個々人が自らの意志に基づいて就労を選択できる可能性を見いだすことができるのである。

しかし、本論は女性労働問題のほんの入り口地点に立ったに過ぎない。特殊研究と性別職務分離研究のさらなる発展と統合によって、企業社会を含めた就労選択の問題の総体における解決が初めて見出されることになるだろう。

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