「無知であることを自覚し続ける。」これは、享年46歳という若さでこの世を去った、アニメーション監督 今 敏監督が遺したメッセージである。今 敏監督は、「自分の無知を自覚して、その無知無能さをわずかずつでも埋めようとする態度こそが実は『能力』というものではないか」と語っている。これが記されたのは、キャリア・ステージのキャリア中期からキャリア後期へのトランジションにあたる時期である。

さて、皆さんはこの一年間を通して、どのような態度で臨み、何を学んだのだろうか。私は、この一年、専修大学ネットワーク情報学部、青山学院大学経営学部・社会情報学部、東京大学大学院情報学環という組織を行き来してきたが、多くの方々よりご支援・ご協力を得て、皆さんの学習環境の充実に努めてきたつもりである。私が不在の時は、不便をかけたかもしれない。しかし、他の研究室の学習環境と遜色がないように、一心不乱となって、皆さんの研究活動の支援に取り組んできたつもりだ。なぜならば、私は母子家庭で育ち、母が汗水垂らして一所懸命に働いて、私を育ててくれたという自身の経験があるからだ。結果として、一人ひとりの関心に基づいた独創的な研究テーマが掲げられ、私自身が皆さんから学ばせてもらうことが多々あった。例えば、研究対象を挙げただけでも、ゲームソフトの価格、ゲームセンターとプレイヤー、ゲームの人への影響に関する新聞記事、オンラインゲーム、現代美術家、プロ野球選手・監督、アイドル、音楽、就活学生、NPOなど、多様性に富んでいる。なぜ、このような対象に注目したのだろうか。どのような現象に着眼したのだろうか。私は胸を踊らせた。

このようなオリジナリティ溢れる視点、すなわち事象への独自のアプローチをこれからも大切にしていってもらいたい。学生生活を離れ、社会に出ると、合理性を追求しがちである。例えば、上司へのいわゆる報連相、社内や部課内の生産性向上など、枚挙にいとまがない。「時は金なり」という慣用句にもあるように、キャリア初期には時間の制約というリアリティショックを受けるかもしれない。そのため、卒業研究で経験したような、腰を据えて思考を巡らす時間はとても貴重である。私は、卒業論文というアウトプットよりもむしろ、それを完成させるまでのプロセスを大切にしてもらいたいと思っている。どれだけの仲間があなたを支えてくれただろうか。それは、きっと、あなた自身の態度に関わる問題である。今 敏監督が遺したメッセージに従えば、その態度こそが問われているのではなかろうか。死生観にも関わるが、時間は有限だが、存在は悠久であるという考え方もできる。一方で、時間は悠久だが、存在は有限であるという捉え方もできるであろう。あなたが今後どのように生きていきたいのか、その意志について、卒業という人生のトランジションに思考を巡らせてもらいたい。皆さんの可能性は無限大だ。希望に満ちあふれている。

大学卒業後、22歳~60歳までの38年間、1日8時間、週5日45週間働くと仮定した場合、職場で過ごす時間は「6万8400時間」にも及ぶ。さて、この時間をいかに過ごそうか。それは皆さん次第だ。これまでの学校生活のように、レールは敷かれていない。これからは、あなた自身が創っていくのだ。大いに羽ばたいて欲しい。そして、組織を越境しても、学び続ける存在であってもらいたい。それが、私から皆さんへ贈る最後の言葉である。

担当教員:藤原正仁

●専修大学ネットワーク情報学部 藤原研究室 卒業論文題目

  • 家庭用ゲームソフトの価格変動:中古市場と廉価版の分析
  • ゲームセンターでのプレイヤーのつながり
  • テレビゲーム悪影響論の伝播と変遷:メディア報道資料からの考察
  • 国内におけるオンラインゲームの現状と課題:快適なプレイ環境の提案

●青山学院大学経営学部 山下(藤原)研究室 卒業論文題目

  • 現代美術家のキャリア発達とブランディング
  • プロ野球選手の引退後のキャリア
  • アイドルとその物語:AKB48 の消費構造を事例にして
  • 音楽の消費と受容に関する研究:CD が売れない時代の消費者行動とは
  • 就職活動時のパーソナルネットワーク
  • 地域密着NPO の役割
  • プロ野球監督のキャリアとチームマネジメント

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「ゲーム開発者のキャリア研究の国際的動向と今後の課題」日本デジタルゲーム学会2011年次大会、予稿集pp.XX-XX、立命館大学(2012年2月26日)にて発表しました。

●キーワード
ゲーム開発者、キャリア研究、時間軸、学習資源、国際比較

●概要
ゲーム産業の発展に伴って、エンターテインメントの創造を担う開発者のキャリアに関する研究への関心が高まっている。例えば、QOL、ダイバーシティ、職業アイデンティティなど、さまざまな問題関心に基づいて、国内外でゲーム開発者のキャリア研究が蓄積されてきている。本発表では、海外における研究成果・知見を整理し、ゲーム開発者のキャリア発達に関する知識基盤の整備に向けて、研究の現状と今後の課題について議論する。

●予稿集原稿

ゲーム開発者のキャリア研究の国際的動向と今後の課題

ゲーム開発者のキャリア研究の国際的動向と今後の課題

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「ゲーム産業における女性開発者のキャリア発達」日本キャリアデザイン学会第8回研究大会、資料集pp.XX-XX、日本大学法学部10号館三崎町キャンパス(2011年10月2日)にて発表しました。

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2011年9月6日(火)~8日(木)にパシフィコ横浜で開催されたCEDEC2011には、馬場研究室(東京大学)と藤原研究室(専修大学)が共同で企画した「ゲーム研究最前線」に、多くの方々にご来場いただき、厚く御礼申し上げます。

私の発表資料「女性ゲーム開発者のキャリア発達」をCEDiLにアップロードしましたので、ご高覧いただければ幸いです。
発表後に多くの方々よりいただいたご質問やご意見は、今後の研究の参考にさせていただきます。
ありがとうございました!

●関連サイト
CEDiL: CEDEC Digital Library
2011年9月6日(火)13:30~14:30 キャリアについて考える
2011年9月6日(火)14:00~14:30 女性ゲーム開発者のキャリア発達
東京大学大学院情報学環馬場章研究室ウェブサイト
2011年9月10日(土)掲載記事 INSIDE 【CEDEC 2011】ゲームクリエイターのキャリアを考える/セガ石倉氏と専修大・藤原氏
2011年9月10日(土)掲載記事 GameBusiness.jp 【CEDEC 2011】ゲームクリエイターのキャリアを考える/セガ石倉氏と専修大・藤原氏

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2011年4月、総務省より専修大学が「ホワイトスペース特区」として選定されたことを受け、ジャーナリズム精神や映像製作技術の体得、ワンセグ映像配信技術の研究開発、産学官民連携による地域活性化などについて検証するための取り組みを推進することに加え、ワンセグを活用した情報発信により大学と地域をつなげることで、都市型のコミュニケーション問題に一石を投ずべく、専修大学生田キャンパスをカバーするコミュニティ放送局「かわさきワンセグ(Kawasaki One-Segment Television)」を設置しました。
専修大学ネットワーク情報学部福冨忠和教授および学部3年生8名とともに「かわさきワンセグ」プロジェクトを推進しています。

●サービスイメージ

  1. 学生や市民の協力で、シンプルかつタイムリーな映像コンテンツを制作・配信する
  2. 地域に根差した番組の配信により、大学 – 地域間の連携・活性化を目指す
  3. 学生が主体となり、地域貢献を目的としたコミュニティづくりを目指す

●背景

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、私たちが日常生活で享受しているさまざまな情報通信インフラが断絶しましたが、ワンセグは緊急災害時にも頑強なインフラであり、とくに地域に密着した情報配信メディアとして大いに役立つという教訓を得ました。
私たちは、この教訓を活かし、とくに緊急災害時の有益な情報提供ツールとして、「かわさきワンセグ」を活用していくことを活動目標の一つとして掲げました。
2011年8月に実施した川崎市総合防災訓練を筆頭に、かわさきワンセグを本格的に始動し、学生制作による大学や地域に関連するさまざまなコンテンツを毎日配信していきました。

●産官学民連携による運営

大学だけでなく、多摩区や地元商店街、一般市民の方々からも支援や協力を得て、地域密着型の番組を制作し配信しています。
例えば、地域のイベントや本学および近隣の学校行事などに積極的に参加して番組化することで、タイムリーな地域活動の映像配信に取り組んでいます。また、大学における知的活動を映像化して社会との対話を目指しています。さらに、2011年9月以降は、かわさきエフエムと連携し、毎週火曜日の昼の時間帯に、ラジオとエリアワンセグのマルチモーダルな番組配信を行っています。

●関連サイト

かわさきワンセグ 公式サイト
かわさきエフエム 公式サイト
専修大学 公式ウェブサイト「総務省『ホワイトスペース特区』に決定」(2011年6月6日)
日経BP IT pro 「ホワイトスペース特区、専修大学は多摩区や明治/日本女子大と連携し2011年中に開始へ」(2011年6月8日)
タウンニュース 多摩区版「専大が独自にワンセグ」(2011年6月10日)
ニュース専修ウェブ版 2011年7月号(第490号)
ニュース専修ウェブ版 2011年9月号(第492号)
学生サイボウズLive活用コンテスト 第一次審査通過 専修大学「かわさきワンセグ」(2011年9月6日)
専修大学 公式ウェブサイト「かわさきワンセグキャンパスライブ」公開生放送(2011年10月21日)
カワサキオンライン 「かわさきワンセグ:川崎市総合防災訓練」【映像】
専修ムービー 「かわさきワンセグ企画」【映像】 

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「キャンパス・コミュニティ放送『かわさきワンセグ』の取り組み」情報通信学会第28回大会、専修大学生田キャンパス10号館(2011年7月3日)にて発表しました。

●関連サイト

情報通信学会第28回大会プログラム

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私こと、2011年3月31日をもって東京大学の任期を満了し、2011年4月1日より専修大学に赴任いたします。
在任中に、皆様からいただきましたご厚誼に厚く御礼申し上げます。新任校となります専修大学にても、引き続き何卒よろしくお願いいたします。専修大学の連絡先は以下のとおりです。

〒214-8580 神奈川県川崎市多摩区東三田2-1-1
専修大学 10号館 10601研究室
ネットワーク情報学部
講師  藤原 正仁

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ダイヤモンド・オンライン「コンテンツ業界キャッチアップ」(2010年12月28日)に、ゲーム業界で働く人たちの2010年の注目ニュースに関する記事が掲載されました。今回のテーマは、「ゲーム業界ゆく年くる年~識者と語り尽くす 任天堂の逆風、ソーシャルゲームの勢い、キネクトとトルネの可能性・・・そして業界の未来」です。

ゲーム業界の人材面からみた2010年の注目ニュースとして、大手ゲーム会社のリストラ、ゲーム業界就職フェアの初開催、著名開発者の離職を取り上げて、それぞれコメントし、開発者を、代替可能な資源ではなく、組織とともに共創的価値を生み出す「創造的人材」とみなす必要性について言及しました。また、2010年5月に提出した「違法複製ゲームソフトの使用実態調査報告書」についても紹介しています。

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東北芸術工科大学デザイン工学部「コンテンツ・ビジネス論」にて、「コンテンツビジネスの可能性とキャリア形成:ゲーム産業を事例として」(2010年11月8日)というテーマで講義を行いました。

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「コンテンツ産業におけるインターンシップによる学習プロセスの探索的研究」日本キャリアデザイン学会『キャリアデザイン研究』Vol.6、pp.113-124(2010年9月)を執筆しました。

●キーワード
正統的周辺参加、省察的実践、学習環境デザイン

●概要
わが国のコンテンツ産業では多様な産学連携教育が広まり、そのひとつとしてインターンシップが定着しつつある。しかし、インターンシップの教育的な側面を強調する政策の影響を受けて、インターンシップ研究には「教育」の観点からのアプローチが多い。これらの多くは、インターンシップ推進者の立場から、インターンシップの教育制度設計を議論した内容であり、「学習」の観点に注目されることは少なかった。また、近年、世界的にインターンシップの教育効果測定に関する研究が注目されているが、佐藤(1996)が「過程-産出モデル」を批判しているように、「計画-実行-評価」あるいは「目標-達成-評価」として教授と学習の内的過程はブラックボックス化され、学習者の観点が捨象されてしまう懸念がある。
そこで、本論考では、「学習」の観点に基づき、コンテンツ産業のインターンシップに参加した学生を対象にM-GTAを用いた分析を行い、インターンの学習プロセスを解明した。研究方法として、M-GTAを用いた理由は、現象の解明だけではなく、実践的応用においても有効なためである。
分析の結果、以下の3点が明らかにされた。
第一に、インターンシップにおける学習プロセスにおいては、Lave and Wenger (1991)が「正統的周辺的参加」と称したように、社会的実践の場である実践共同体に周辺的であっても正統的に参加すること、つまりインターンであってもインターン先の構成員としての自覚と目的を持って主体的に参加することが重要である。また、周辺的な業務への参加であっても、その業務の組織的意義を見出し、実践共同体における信頼を獲得することで、十全的参加者になることが可能となる。さらに、周辺的参加から十全的参加への変化を通じて、キャリア・アイデンティティも変容する。
第二に、インターンシップにおける学習を促すためには、Schön(1983)が指摘した「省察的実践」という省察的な探究のプロセス(省察的学習)が重要である。省察的な探究のためには、内省するだけではなく、対話が必要である。インターンは、インターン先指導担当者からのフィードバックにより気づきを得ている。とりわけコンテンツ産業では、「対人関係の構築」、「現場言語の獲得と意思疎通」、「共感や納得の獲得」にみられたように、言語や非言語を媒介したコミュニケーションが重要であり、これらは内省や対話を通して獲得されている。また、[批判的省察とジレンマ]のカテゴリーにみられたように、社会的実践における自己概念の変容は学習を促進させる源泉となる。
第三に、教育的観点からはインターンシップには大学・学生・企業にとって効果的な教育制度設計が期待されていることが指摘されている。それに対し、本論考では、インターンの学習プロセスに注目したところ、[キャリア・アイデンティティの醸成]と[キャリア・アイデンティティの混乱]というカテゴリーが得られた。このことから、インターンシップ・プログラムを開発する際に、以下の点に注意が必要であることが読み取れる。すなわち、如上の理論を実践場面で応用することにより、学習者主体の学習環境をデザインし、個別の発達的課題の克服を支援することがインターンシップによる学習とキャリア発達において重要である。

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